2018/4/26に銀座蔦屋書店で行われた、WIRED 元編集長 若林恵さんの初著作「さよなら未来 エディターズ・クロニクル 2010-2017」発売記念トークベントに行ってきました。イベントのレポートと感想をまとめておきます。
「さよなら未来」発売記念トークベントに行ってきた
【トークイベント】若林恵×宮崎夏次系×石川善樹 | 銀座 蔦屋書店
イベントが始まる前に、予防医学者の石川善樹さんがフラッと会場に現れて、最前列の人たちに「今日は何がお目当てですか?」とヒアリングを始めました。いやいや、テーマ決まってるんじゃないんですか(笑)
石川さんのトークイベントにも以前に行ったことがあるのですが、何かしらこの手の面白いことが起こります。「はい、じゃあ隣の人とディスカッションしてください」って振ってきたり、会場にいらっしゃったご両親とのトークが突然はじまったり。
ヒアリングの結果、「WIREDの裏話が聞きたい」、「漫画家の宮崎夏次系先生に興味がある」、「人文学の未来はどうなるか」、「テクノロジーはこれからどう発展するのか」などなど、いろんな意見が上がりました。
そして若林さんが「じゃあ、どれにも関係ない話をしましょうかね〜」とトークイベントスタート(笑)
あえて言うなら、未来の話
わたしはWIREDの熱心な読者ではなかったのですが、若林さんのトークは伊藤穣一さんのイベントで一度聞いたことがあり、「軽妙だけど本質的な話をする人だなあ」という印象を受けて、ウォッチしていました。
今回も、相変わらず軽妙だけど深い知識と思考に裏打ちされたトークで楽しかったのですが、話があまりにも多方面に飛びすぎて、全然まとめられません。
あえて言えば、「未来」がキーワードでしたね。今、流通している未来のイメージは、過去の映画「テクノポリス」や「2001年宇宙の旅」で作られた未来のイメージのクリシェしかない。過去における未来のイメージでしかないと。
また、科学技術の進歩による変化が、未来そのものと思われている風潮は疑問だと話されていました。日本では科学技術が進歩することで経済的成長が達成されてきた。ゆえに未来とはテクノロジーの進歩だという価値観が広まっているが、それを見直す時期に来ているのではと。
この辺の話は「近代日本150年」に詳しく書かれています。
じゃあ未来はどうなるの?って気になりますよね。石川さんいわく「未来がどうなるかなんて分からないのだから、楽しむしかないですよ」とのこと。若林さんいわく「未来とは現在との差分である」。
未来は現在の延長線上になく、差分として現れる。その差分はブラック・スワンのように事前に予測できるものではなく、現れた瞬間に今までの常識をくつがえしてしまう。
わたしも、テクノロジーの進歩を先読みしてポジションを取るべしって最近よく聞く言説に疑問を覚えていたので、この言葉には共感しました。「予測できる」ということは、現在の常識や知識が材料になっているということなので、その時点で「未来」とは言えないんです。
だとしたら、予測不可能な未来を楽しむしかないじゃないですか。そして、楽しむだけの強さをたくわえればいい。現代における強さとは、他人や世間に流されず本質を見抜く力、自分で考え抜く力、変化に適応する力の3つだとわたしは思います。
「さよなら未来」は、若林さんが自分自身の思考力について徹底的に打ちのめされた体験からはじまります。その体験があったからこそ、ほかの人とは違う目線、発想を身につけることができたとも。
未来を生き抜く強さを身につけたいなら、オススメの1冊です!