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DUNE 砂の惑星  〜居心地の悪い郷愁〜

映画「DUNE」を観たので感想をまとめる。DUNEは1965年に小説の第1作が発表された。その後20年をかけて第6作まで出版された。1975年にホドロフスキーが映画化しようとして頓挫。1984年にデビット・リンチが映画化。そして2021年にヴィルヌーヴが映画化。しかもヴィルヌーヴのDUNEにはpart1の文字が付いているのである。続編作る気マンマンなのである。ヴィルヌーヴからしたら50年以上前の小説なのに。DUNEという小説が、どれだけ強い磁場を持っているのかよく分かる。磁場という言葉は、古き良きSFに対する郷愁と言い換えてもいい。

 

DUNE 砂の惑星

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©️warnerbros

DUNEは映画館で観よう

まずこの映画はストリーミングではなく、映画館で観るべき映画だ。さらに言うならIMAXで鑑賞するのがベストだ。私は池袋のグランドサンシャインシネマのビル6階分の高さという、笑っちゃうくらいデカいスクリーンでこの映画を観た。空撮のシーンは酔いそうなくらい臨場感があった。

 

映画館での鑑賞を勧める理由は、臨場感の他にもう一つある。この映画はダルいのだ。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の他のSF映画を観た人なら分かるだろう。「メッセージ」、「ブレードランナー2049」どちらも登場人物の内面の葛藤が微妙な表情の変化で表されることが多い。それでも「メッセージ」は主人公の葛藤がそのまま映画のメインテーマの謎解きのキーになっているからまだ良かった。「ブレードランナー2049」は派手なアクションとギミックに挟まれる、いい箸休めになっていた。

 

「プリズナーズ」でも「複製された男」でも同じだ。でもそれがヴィルヌーヴ監督の作品に独特のテンポをもたらせて、作品として「ヴィルヌーヴ節」を感じさせるものになっていた。

 

しかし「DUNE」ではその手法を使いすぎている。そしてアクションシーンは控えめ。思わせぶりな主人公の顔の大写しと、茫漠とした砂漠のシーンが続く155分。ストリーミングだと多分途中で脱落するだろう。ティモシー・シャラメが死ぬほど好きな人じゃないと、2時間半の間も画面に引きつけられ続けるのは困難だと思う。私もIMAXの暴力的なまでの映像と爆音が無ければ最後まで鑑賞できなかった。そしてもちろんティモシー•シャラメが死ぬほど好きだ。端正な顔立ちを大画面で堪能できてお腹いっぱいだ。

 

決して出来の悪い映画じゃない。スケールも大きいし、俳優陣の演技も最高だし、ストーリーも良く練られている。でもどこか居心地の悪い映画だった。それはヴィルヌーヴのテンポのダルさだけが理由ではない。

 

居心地の悪い郷愁

DUNEは強い磁場を持っている。それは古き良きSFへの郷愁といってもいいと冒頭に書いた。その郷愁が私にとっては居心地が悪かった。この映画に出てくる広大な宇宙を支配する皇帝も、香料というリソースを巡って争う諸侯たちも、香料の原産地に住み、貴族と全く違う生活習慣と宗教を持つ原住民たちも何だかどこかで観たことある。観たことあるだけじゃない。

 

今を生きる私は知っている。為政者は自国ですら完全に統治することができない。リソースは有限であり、サステナビリティを意識しなければ事業継続も環境維持も危うい。異文化理解なきところに成長なし。SFというジャンルを通じて現代社会の問題を抉るような目線があれば、まだこの映画も楽しめたかもしれない。でもDUNEは古き良きSFへの郷愁を画面いっぱいに映し出すだけだ。それは美しいけれど虚しくて、とても居心地が悪い。もう私たちはそこにいちゃいけないんじゃないのヴィルヌーヴ。